8 病床稼働率と外泊のピットフォール 師長会リターンズ

 奈須が師長になり、1ヶ月以上がたった。そして先月大恥をかいた師長会がやってきた。今回は、勉強もしたので、恥をかかずに済みそうである。今回のテーマは、①、②についてである。これらは、病院経営に影響を与えるということであった。

斎藤:今日のテーマは、病院の経営にとって重要なテーマです。先月の病院の収入が前年比で3%落ちました。そこで、これ以上、収入が下がらないように対策を考えたいと思います。

 いつもより緊迫した中で始まった師長会は、根田師長が先月のデータを読み上げた。

根田:病院全体の病棟の稼働病床は、1日当たり151床で75.9%でした。いつもは、80%を超えているので、先月、病棟で何があったのか聞きたいと思います。

 根田の同僚の鈴本智子(すずもとともこ)は、内科病棟の師長である。先月の実績データを見ると、鈴木の病棟が病院全体の稼働率低下の原因となったようだ。

鈴本:病院全体の稼働率が悪かったのは、うちの病棟の稼働が大幅に悪かったからかもしれません。原因は、死亡退院が多かったことと、職員の急な休みが多かったため、入院の受け入れができなかったからだと思います。

斎藤:職員のせいで、入院が受けられないのは、患者さんにとって申し訳ないんじゃないの?

鈴本:でも、夜勤帯で入院を受け入れたりすると、職員が疲弊して、離職が増えますし...

根田:それは、管理の問題じゃないの?

鈴本:私は、出ていますよ。休んだ職員に代わってまで出勤していますよ!これ以上、どうすればいいの。それでなくても、内科病棟は老人が多くて、点滴を刺すにも大変なんだから...

 師長会は、修羅場になった。でも、奈須には、鈴本師長が問題解決しようとしているとは思えなかった。

斎藤:鈴本師長、それでは、次回までに、突然休みを減らすための対策を考えてください。突然休みが減れば、稼働はあがりますね?

 次の議題に移り、外泊と他院受診について議論がされた。

斎藤:では根田師長、患者さんののメリットとデメリットについて説明してください。

根田:患者さんの外泊のメリットは、患者さんやご家族が自宅復帰のイメージできるようになるとということですそれと、患者さんのQOLの向上ではないでしょうか。家族と過ごすことにより、患者さんにとって療養に張りが出てくる。これにより、早く退院でき、病院の平均在院日数の短縮にもつながる可能性があります。デメリットは、病院の収入です。外泊すると入院基本料の15%しか算定できません。当院ですと、1,300点が195点となってしまいます。(現在は変更あり)

斎藤:よくできました。皆さんも知っているはずですが、忘れていた人は、もう一度、頭に入れてください。安易に外泊を勧めないでください。気の早い話ですが、今年の年末の外泊をどのようにするか、今から考える必要はありますね。ゴールデンウィークや病棟の担当医師の夏休みの前になると外泊が増える傾向もあるので、もし患者さんが退院できるような状態であれば、医師と相談して、退院するように指導してください。 奈須は、外泊で病院の収入が大幅に減ることを知らなかった。もしかしたら、カンファレンスで聞いたのかもしれないが、初耳のように思えた。管理職と現場の看護師との言葉の違いにも、気付き始めたな奈須であった。